父と980円と僕。

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父親と目が合わなくなった。

多分、高校を卒業して

働くようになってから

父親と目が合わなくなった。

たまに、父親と目線を合わせたとき

必ずこちらを見ているから目が合う。

だからこれは、僕の一方的な行動だ。

父親と目を合わせなくなった話を

兄にしたら、兄もいつからか

父親と目を合わせなくなったと言った。

そして、たまに目があったとき父親の目が

朴訥な目をしているなと思うらしい。

僕は父親と目を合わせたとき

いつも淋しそうだなと思う。

仕事が終わって家に帰り

車庫に車を入れて出てくると

直立不動の作業着姿の父親がそこに居て

こちらをまっすぐ見つめて「きたが」と言う。
僕は「きたよ」と言い、家に入る。

父親とは特に会話もしない。

父親はテレビが好きで、お酒が好きで

よくタバコを吸う。

ネコとじゃれあい、酔った日の夜は

一階でキーボードを弾くか

二階でギターを鳴らす。

父親と目も合わないし、会話もないが

結構見ている。そして聞いている。

いつもタバコのおつかいを僕か兄に頼む。
前までは、ソフトだったのが

最近はボックスになった。

理由を聞くと、ソフトだと潰れると言った。

もしかすると

昔は中が潰れる前に吸い切っていたのが

今は沢山吸わなくなったから

潰れにくいボックスにしたんだろうか。

2箱を毎回頼む。

たまに頼まれていないけど

タバコを買って帰る時もある。

夜に買ってきて

いつも座っている所に置いておくと

次の日の朝には無くなっている。
目線の合わない、会話のないやりとりだけど、そういう親子関係。